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~第九話 アマンとムーン・ラット・キッス 対決の行方①~ ムーン・パークの決闘

Penulis: 倉橋
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-03 13:22:42

 闇の中に悲鳴と不気味な咆哮が響きわたる。さすがのアマンも、何が起きているのか、全く何も掴めずにいた。

 ウオオオオーーーーン

 謎の咆哮が闇に吸い込まれていった。後には逃げ回る人々の助けを求める叫びだけが残った。

 一体、あの咆哮は何だったのか?

 やがてステージを包んでいる闇がだんだんと薄れていった。死刑を見物に来たら自分が死にそうな恐怖に遭遇、大声で泣き叫ぶ人々のぶざまな様子がハッキリと見えてきた。

 そして元のように、キラキラと明るい星空に包まれたスタジアムの光景があった。

 星空の照明の下、アマンは茫然とステージに立ち尽くしていた。

 白いステージが完全に消えていた。ステージ全体が、どす黒い血の絵の具で覆われている。客席も血の飛沫で覆われ、手足や衣装に血のついたことに気づいた観客が再び悲鳴をあげている。

 血の海の中、赤い物体がふたつ転がっていた。

 アマンはハッとして、ふたつの物体のそばに駆け寄る。血まみれになっていたが、それが何であるかすぐに分かった。

 血で赤くなったサライとリルの母娘の頭部だった。首の付け根から下は、ステージを囲む溝の中に横たわっていた。

 サライは目を大きく開けて、アマンを見つめていた。何かを話したそうな表情だった。だが猿轡の奥から、うめき声が聞こえることはなかった。リルは恐怖に怯えた表情で、口を大きく開けていた。

 最後に一体、何を見たのだろうか?

「処刑は滞りなく終わった」

 背後で声がした。

「ご苦労だった」

 アマンはムーン・ラット・キッスと再び向かい合った。

「あなたの仕業ですね」

 ムーン・ラット・キッスから返事はない。

「これを見て何も感じないあなたを私は許しません」

 アマンは右手の剣先を突きつける。剣先の一メートル先には、ムーン・ラット・キッスの喉元がある。

「ただの職業軍人が、月の先住民族、ムーン・ラット族の最後の生き残り。そしてセレネイ王国非常勤顧

問の私に挑戦するつもりか?」

 ムーン・ラット・キッスが小さく笑った。

「悪いが無理だろうな」

 アマンは負けない。

「軍人である前に、私は人間です。権力を振りかざし、好き勝手に振る舞い、自分に都合よく他人を利用し、そして生命《いのち》と幸せを平気で奪うあなたを、人間として許せません」

 アマンは剣を構えたまま、一歩前に出る。剣先はムーン・ラット・キッスの喉元のすぐ前にある。

「女王陛下。どうか私の言葉、忘れないでください」

 アマンの鋭い声が響く。

「ではお前も忘れないことだ。学校ではよほど成績が悪かったようだな。たった今、復習させてやろう」

 ムーン・ラット・キッスは剣先を前に微動だにしない。

「よく聞くがよい」

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